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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
精神をどういう所に落着けて、そこからどういう風に立ち直るか、その地盤が問題なんだ。」
ぱっと、電燈がついた。蝋燭の火が夢のように薄らいで見える。三人は顔を見合わせて、ぼんやり微笑んだ。順一は蝋燭を吹き消した。
「没落の話なんかつまらん。コリントをやろう。」
暴風雨は、電燈がついたせいか、多少静まりかかってるようにも思われたが、まだなかなか止みそうにはなかった。室内はむし暑かった。風下の窓を開くと、冷かな夜気が流れこんできた。盤上をころがる鉄の丸が、風雨の音に調子を合せて、ゲームに気乗りがした。
コリントでも、八重子はいちばん慎重であったし千重子は二つ丸を突くのを喜んだ。順一は中央の五十点を陥れるのが得意だった。
「どうだい、五十点が六つも並んだ。」
「盤を傾けてやしないの。」
「やきもちやくなよ。フェアー・プレーさ。」
一人がやってる間、二人は遊んでおられるが、別に話すこともなく、鉄丸の行方を皆の眼が見つめていた。
みよやが静かにはいって来た。
「お嬢さまに、お電話でございます。北村さまから。」
「あら、北村の小父さま、今頃なんだろう。」
千重子は廊下に出て、電話室の方へ行った。