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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

きみ、相かわらず頼むよ」

「どうぞよろしく」

と正三君はニコニコしながら、ふところへ手を入れて、

「若様、手前はこういうものでございます。ヘッヘヘ」

と名刺を取り出した。

「どっこい」

と照彦様は飛びのいて、グルリとまわったと思うと、

「僕もこういうものだよ。ハッハハハ」

とやはり名刺をつきつけた。

「おやおや」

「きみもこしらえたのかい?」

「はあ。若様にごらんにいれて、羨ましがらせてさしあげるつもりでした」

「その手は食わない。僕こそきみがこしらえるといけないと思って、わざと黙っていたんだ」

「どうもおずるいですな、若様は」

「きみだってぬけめがないよ」

「ハッハハハ」

「ハッハハハ」

と二人は名刺を交換した。この年頃はなんでもおとなのまねがしてみたい。

「若様のは金縁ですな」

「うむ。それから裏を見たまえ。エヘン」

「ははあ。ローマ字ですね」

と正三君は感心して、

「これは僕が負けました」

といった。

「なあに、アイコだよ」

「でも僕のは較べものになりません」

「いや、きみのは肩書がついている。やっぱり学校のことを忘れないからええらい」

と照彦様は数日わかれていたなつかしさが手つだって、極上のごきげんだった。