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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「ありません」

「おやおや、話せないな」

「若様は始終お出かけですか?」

「こっちじゃめったにゆかないが、夏大磯でやる。僕は名人だぜ」

「僕に教えてください」

「いいとも」

「鯛が釣れますか?」

「品川で鯛が釣れてたまるものか?」

「それじゃなんです?」

「この頃は鯔と丸太が食うそうだ」

「なにを食うんですか?」

「きみはほんとうに素人だね」

「ええ。なにも知らないんです」

「食うってのは餌を食うことだよ」

「ああ、そうですか」

「餌を食ったところをグイッと上げるから釣り針が口へ引っかかる」

「わかりました」

「鯔と丸太と蒲鉾が釣れる」

「ばかになすってもだめですよ」

「ハッハハハハ」

と照彦様は冗談がおすきだ。学問の方はあきらめていて口出しをしないかわりに、遊びごとになると調子に乗る。

「だれとだれがお供をしますか?」

「富田と黒須先生さ。きみもぜひきたまえ」

「はあ」

「杉山もつれてゆく」

「富田さんはおじょうずですか?」

「さあ。とにかく天狗だよ。黒須先生もよく講釈をする。しかし僕にはかなわない。僕がいつも一番槍だ」

「えらいですな」

「ヘエン」

「海は危ないことはありませんか?」

「大丈夫だ。お台場の少しむこうだもの」