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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「お楽しみですな。さっき富田さんから承りましたよ」

「富田さんと黒須先生とそれからおよぎの名人の杉山が一緒ですから、ちっとも心配はありません」

「釣魚はけっこうですよ。しかし海の上のことですから、念のため後刻お殿様へ申しあげましょう」

「お父様も釣魚はおすきな方です」

「私も大すきです。『釣りすれど網せず』若様おわかりですか?」

「さあ」

「内藤君、どうだね? 釣りすれども網せず」

「さあ」

と正三君も首をかしげた。こうだしぬけにメントル・テストをやるものだから、安斉さんはいやがられる。

「釣りすれども網せず、論語のことばですよ」

「どういう意味でございますか?」

「同じ殺生をするにしても、釣りなら一ぴき一ぴきですが、網を打つと、いわゆる一網打尽で、一ぺんに何十ぴきもとってしまいます。殺さなくてもいいものまで殺す。それで釣りすれども網せず。仁者の心得をのべたものです」

「ははあ」

「舟遊びは浩然の気を養うからよろしい」

「先生、浩然の気ってなんでございますか?」

と照彦様がいつになく質問をした。

「敢問何謂浩然之気。曰難言也」

「…………」

「自反而縮。雖千万人吾往矣」

「…………」