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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「先生、むずかしいです」

「ハッハハハハ」

と安斉さんはひとりで喜んでいる。

「先生も釣魚にいらっしゃいませんか?」

と正三君がさそった。

「けっこうですな」

「ぜひおいでください」

と照彦様はからかうつもりだった。

「天空海闊」

「はあ?」

「天のむなしきがごとく海のひろきがごとき心持ちは舟遊びをすると初めて味わわれます」

と安斉先生は大きなことをいいだした。しかし酔って青くなったのを知っている照彦様は片腹痛く思って、

「けれども先生は舟におよわいことはございませんか?」

とやった。

「強いですとも」

「お酔いになったことはございませか?」

「酒にですか?」

「いいえ、舟にです」

「ハッハハハハ」

「おありでしょう?」

「舟を飲んだことはありませんよ。ハッハハハハ。いったい舟に酔うということばが不可解ですな。日本は海国、おたがいは海国男子、海を恐れてはいけません」

と先生はアベコベにお説法を始めた。正三君は照彦様からきいたことを思い出すとおかしくなって、

「先生、それでは今度の日曜にぜひお供を申しあげましょう」

と追究した。

「いや、私はごめんこうむる」

「おさしかえでございますか?」