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ちのもじ
血の文字
黒岩 涙香
「綾にしき」1892(明治25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页
上、猶お争われぬ大の証拠と云う可きは血膏の痕を留めし最鋭き両刃の短剣なり、殊に其形はコロップの裏の創にシックリ合えり、生田の罪は最早や秋毫の疑い無し。
是より半時間と経ぬうちに生田は目科と余の間にはさまりて馬車に乗せられ警察本署へと引立られしが余は其道々も余り捕縛の容易なりしに呆れ「あゝ案じるより産むが易い」と呟けば目科は「先ア探偵に成て見たまえ斯う易々と捕縛されるのは余り無いから」と答えたり。
斯て生田は直ちに牢屋へ入られしが、牢の空気は全く彼れの強情を挫きし者と見え彼れ何も彼も白状したり其大要を掻摘めば彼れは久しく藻西太郎と共々に飾物の職人を勤めしだけ太郎の伯父なる梅五郎老人とも何時頃よりか懇意に成りたり、此度老人を殺したる目的は全く藻西太郎を憎むの念より出しものにて彼れに人殺しの疑いを被せ其筋の手を借りて亡き者とし其後にて倉子と添遂ると云う黙算なれば、職人の衣類を捨て故々藻西の如き商人の風に打扮ちプラトを連れて老人の許へ問行きしなり、是だけにて充分藻西に疑いの掛るならんと思いたれど猶お念の上にも念を入れ、老人の死骸の手を取り、傷より出る