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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

「綾にしき」1892(明治25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,021 字 · 87 页

青空文庫

男なれば倉子が放免せらるゝや直ちに引取りて元の通りに妻とせり、梅五郎老人の身代は藻西太郎の手に落たれど倉子の贅沢増長したれば永く続く可しとも思われず、此頃は其金にてトローンの近辺へ不評判なる酒店を開業し倉子は日夜酒に沈溺せる有様なれば一時美しかりし其綺倆も今は頽れて見る影なし、太郎も倉子が酔たる時は折々機嫌を取損ね打擲せらるゝ事もありと云えば二人はそろ/\零落の谷底に堕落し行く途中なりとぞ。(以上、後の探偵吏カシミル、ゴヲドシル記す)

(終)

(小説集『綾にしき』明治二十五年八月刊収載)