轻松读懂日语经典作品
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あめのやまぶき
雨の山吹
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,433 字 · 33 页
――喜市さまの足袋が切れましたわ。
――喜市さまのお草紙がなくなりましたわ。
――喜市さまはお風邪らしゅうございますわ。
といったふうである。
又三郎は大いに不満だった。彼は初めから汝生が好きで、そのためにいつも彼女を泣かせてしまうほど可愛がって、よく兄や母に叱られた。おまえのは可愛がるのか憎がるのかわからない、と云われたものであるが、汝生にはこっちの気持がわかるのだろう、いくら泣かされても、又三郎には誰よりも遠慮がなく、物をねだったりあまえたりした。
喜兵衛がいっしょになってからも、その点には変りはなかった。又三郎にはやはり誰よりも親密で、自由にあまえたり付きまとったりした。喜兵衛に対しては、それとはまったく違うので、文句を云うわけにはいかなかったが、不満なことはどこまでも不満で、ときどき喜兵衛に鬱憤をはらした。いちどは殴って、
――おまえは家来だぞ、いばるな。
と云ったことがある。喜兵衛は決して反抗はしない、罵倒されても殴られても、黙って頭を垂れているが、そのときは父がひどく怒って、
――黙って殴られているやつがあるか、構わないから殴り返してやれ。