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あめのやまぶき

雨の山吹

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,433 字 · 33 页

青空文庫

三

又三郎はその子供たちや、みかけた人々に呼びかけて、この付近で溺死した者はなかったかどうか、と訊きながら、すっかりうちひしがれたような気持で歩いていった。

三

又三郎は五日めに金沢へ帰り、またすぐでかけていって、こんどは四日後に、櫛笄の包と、小さな遺骨の壺を持って帰った。

武家にはいろいろやかましい規則があって、自殺などはそのまま発表できないばあいが多かった。汝生の死も、葛西の家名に関するばかりでなく、婚約者に対する遠慮もあるので、どうしても病死ということにしなければならなかったのである。

兵庫がまだ医者に注意されていたので、三七日の法事まで、又三郎は施主の役の代行で忙しかった。そして、その法事を済ませた夜、彼は初めて兄とおちついて話した。兵庫はまだ一日の大半を寝床にいたし、食事もようやくゆるい粥になったばかりであるが、胃のほうは快方に向っているらしく、血色がずっとよくなり、眼にも活気が出ていた。又三郎はできるだけ、兄を驚かさないように話したが、兵庫は初めのひと言で殆んど色を変えた。

「壺の中が遺骨ではないって」

「黙っているつもりだったんですが、それも無責任じゃないかと思って、お話しするわけなんですが、じつは死躰があがらなかったんです」