轻松读懂日语经典作品
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あめのやまぶき
雨の山吹
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,433 字 · 33 页
「お客さまはおそのさんを御存じでございますか」
「知っているわけではないが、まえにいちどみごとに活けたのを見たものだから」
「皆さんがよくそう仰しゃいます、よろしかったら此処へ来て活けるように申しますですよ」
「そうだな……」
住居を訊いて、じかに訪ねるつもりだった。しかしひと違いのばあいもあると思い、そうして呉れるように頼んだ。
泊り客も少ないとみえ、宿の中は静かだった。造り直したばかりらしい、新しい広い風呂に、悠くり浸っていると、雨の音がし始めた。ひっそりした降りようであるが、あけてある高い小窓から見ると、紫色に芽をふくらませた桐の枝が、たちまちしっとりと濡れていった。
風呂から出て二階の座敷へ戻ると、まもなく女中が茶をはこんで来た。そのうしろから活け花の道具を持った、一人の女がついて来て、隅のほうに慎ましく手をついた。
「おそのさんといいます、どうぞごひいきに」
女中はそう云って、茶をすすめ、なおそこへ茣蓙を敷いたり、水盤や水差を揃えたりして、それから出ていった。
女は汝生であった。幾たびか縫い直したらしい、じみな縞柄の着物にも、古びた厚板の帯にも見おぼえがある。