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あめのやまぶき

雨の山吹

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,433 字 · 33 页

青空文庫

しかし面ざしは変った、ふっくりとまるかった頬も痩せ、額の生え際も薄くなった。膚には艶がなく日にやけて、眼尻や鼻のわきには皺がめだった。そしてあの泣き黒子がびっくりするほど大きく、なにか物でも付いているように見えた。

――こんな姿になって。

又三郎は躯がふるえた。

――喜兵衛め、汝生をこんな姿にして。

怒りが新しく、非常な激しさでつきあげてきた。そして、声をかけようとしたとき、道具をひろげていた汝生が、初めてこちらを見た。又三郎は黙っていた。汝生の眼が大きくみひらかれ、唇があいた。声も出ず、身うごきもできないようだ。尖った肩がしだいに荒く波うち、顔が乾いた土のような色になった。

「まさかと思ったのに」又三郎が云った、「――本当だったんだな、生きていたんだな、汝生、そして本当に動木といっしょなのか」

汝生は眼をつむった。同時に躯がぐらぐらと揺れ、危うく両手をついたが、支えきれそうもないほど力弱くみえた。

「私が来た意味はわかるだろう」

汝生は微かに頷いた。

「小舘さんが見かけて、知らせて呉れたんだ、他言はしないと云われたそうだが、しょせん知れずに済みはしまい、……葛西の兄も、私も、おまえの遺書を信じた、私は小松へいったし、寺井の浜では、櫛笄と草履をみつけて、……おまえが死んだものと思い、遺骨の壺を拵えて帰った、旅