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あめのやまぶき
雨の山吹
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,433 字 · 33 页
まだごく若い、娘のようにみえるが、眉をおとしかねをつけていた。女はあいそよく微笑して答えた。
「はい、どうぞ、お好きなだけどうぞ」
それからすぐに、
「ああ、お召物が濡れますからわたしが切ってさしあげましょう、ちょっとお待ち下さいまし」
女は家へ戻って花鋏と紙を持って来た。そして柴折戸をあけて、こちらへ出て来ると、片袖をぐっと絞り、垣の間へ手を入れて、巧みに花枝を切った。
――その二た枝でいいのだが、
彼はこう云おうとしたが、黙って見ていた。
女の腕は柔らかに肉付いて白く、健康な若い血に満ちていた。こころよい鋏の音につれて、散りかかる花びらが幾つか、その白いなめらかな肌に貼りついた。
――兄へなんと云おう。
又三郎は解放されたような、すがすがしい気持で、そう思っていた。