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あめのやまぶき
雨の山吹
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,433 字 · 33 页
「こんな手紙を、まさか悪戯に書くこともないだろうが、そんなけぶりでもあったんですか、死ぬなどという」
「なかったろうね、あれば誰か気がつく筈だ、ただ」兵庫は眉をしかめた、胃の気持が悪いらしい、だが続けて云った、「――ただ動木のことではずいぶん悩んで、食事も満足にしないようなことがあったそうだ」
「あれは喜兵衛が好きでしたからね」
「彼が出奔したあと暫くは、半病人のようになっていたが、……しかしそのために死ぬということも考えられない、たぶん、自分の身にとつげないわけがある、というのが本当なんだろう、どういうことかわからないけれど」
「とにかく小松へいってみるんでしょう」
「そのつもりで来て貰ったんだが、三浦のほうの都合はいいだろうか」
「都合もくそもあるものですか、私は婿にいったんじゃなく母親ごと松枝を嫁に貰ってやったつもりなんですからね、これからすぐ井波の馬を借りてとばせましょう」
「まあ待て、もうひとつ相談があるんだ」
兵庫はちょっと障子のほうを見て、それから声を低くして云った。もし汝生が死んでいたばあいには、病気で急死したということにし、その手筈をとること。