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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
舞台に注ぐ目だけは、倦まないだろうと云うことが想像せられる。しかし読んでいる人の心は、何等の動揺をも受けない。つまりこれでは脚本と云うものの thtral な一面を、純粋に発展させたようなものだと思う。
目がむず癢いようになると、本を閉じて外を見る。汽車の進行する向きが少し変って、風が烟を横に吹き靡けるものと見えて、窓の外の闇を、火の子が彗星の尾のように背後へ飛んでいる。目が直ると、又本を読む。この脚本の先が読みたくなるのは、丁度探偵小説が跡を引くのと同じである。金を盗んだマリイ・ルイイズが探偵に見顕されそうになったとたんに、この女に懸想している青年 Fernand が罪を自分で引き受ける。憂悶の雲は忽ち無辜の青年と、金を盗まれた両親との上に掩い掛かる。それを余所に見て、余りに気軽なマリイ・ルイイズは、閨に入って夫に戯れ掛かる。陽に拒み、陰に促して、女は自分の寝支度を夫に手伝わせる。半ば呑み半ば吐く対話と共に、女の身の皮は笋を剥ぐ如くに、一枚々々剥がれる。所詮東京の劇場などで演ぜられる場では無い。女の紙入れが出る。「お前は生涯己の写真を持ち廻るのか」