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せいねん

青年

森 鴎外

「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页

青空文庫

この動揺の性質を純一は分析して見ようとしている。ところが、それがひどくむずかしい。先頃大石に逢った時を顧みれば、彼を大きく思って、自分を小さく思ったに違いない。しかし彼が何物をか有しているとは思わない。自分も相応に因襲や前極めを破壊している積りでいたのに、大石に逢って見れば、彼の破壊は自分なんぞより周到であるらしい。自分も今一洗濯したら、あんな態度になられるだろうと思った。然るに今日拊石の演説を聞いているうちに、彼が何物をか有しているのが、髣髴として認められた様である。その何物かが気になる。自分の動揺は、その何物かに与えられた波動である。純一は突然こう云った。

「一体新人というのは、どんな人を指して言うのでしょう」

大村は純一の顔をちょいと見た。そして目と口との周囲に微笑の影が閃いた。

「さっき拊石さんがイブセンを新しい人だと云ったから、そう云うのですね。拊石さんは妙な人ですよ。新人というのが嫌いで、わざわざ新しい人と云っているのです。僕がいつか新人と云うと、新人とは漢語で花娵の事だと云って、僕を冷かしたのです」

話が横道へ逸れるのを、純一はじれったく思って、又出直して見た。