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せいねん

青年

森 鴎外

「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页

青空文庫

「捕われるのですとも。縄が新しくなると、当分当りどころが違うから、縛を感ぜないのだろうと、僕は思っているのです」

「そんなら寧ろ消極のままで、懐疑に安住していたらどうでしょう」

「懐疑が安住でしょうか」

純一は一寸窮した。「安住と云ったのは、矛盾でした。つまり永遠の懐疑です」

「なんだか咀われたものとでも云いそうだね」

「いいえ。懐疑と云ったのも当っていません。永遠に求めるのです。永遠の希求です」

「まあ、そんなものでしょう」

大村の詞はひどく冷澹なようである。しかしその音調や表情に温みが籠っているので、純一は不快を感ぜない。聖堂の裏の塀のあたりを歩きながら、純一は考え考えこんな事を話し出した。

「さっき倶楽部でもお話をしたようですが、僕はマアテルリンクを大抵読んで見ました。それから同じ学校にいた友達だというので、Verhaeren を読み始めたのです。この間 La Multiple Splendeur が来たもんですから、それを国から出て来るとき、汽車で読みました。あれには大分纏まった人世観のようなものがあるのですね。妙にこう敬虔なような態度を取っているのですね。