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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
その韻文をも冗漫だと云うかも知れない。ギョオテもそうである。ファウストが新作として出たら、青年は何と云うだろうか。第二部は勿論であるが、第一部でも、これは象徴ではない、アレゴリイだとも云い兼ねまい。なぜと云うに、近世の写実の強い刺戟に慣れた舌には、百年前の落ち着いた深い趣味は味いにくいからである。そこでその古典的なシェエクスピイアがどう演ぜられたか。当時の新聞雑誌で見れば、ヴェネチアの街が駿河台の屋鋪町で、オセロは日清戦争時代の将官の肋骨服に、三等勲章を佩びて登場したということである。その舞台や衣裳を想像して見たばかりで、今の青年は侮辱せられるような感じをせずにはいられないのである。
二十七日の晩に、電車で数寄屋橋まで行って、有楽座に這入ると、パルケットの四列目あたりに案内せられた。見物はもうみんな揃って、興行主の演説があった跡で、丁度これから第一幕が始まるという時であった。
東京に始めて出来て、珍らしいものに言い囃されている、この西洋風の夜の劇場に這入って見ても、種々の本や画で、劇場の事を見ている純一が為めには、別に目を駭かすこともない。
純一の席の近処は、女客ばかりであった。