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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
妻になったという優勝の地位の象徴ででもあるように、大きい巾を頭に巻き附けた夫人グンヒルドが、扉の外で立聞をして、恐ろしい幻のように、現れて又消える。爪牙の鈍った狼のたゆたうのを、大きい愛の力で励まして、エルラはその幻の洞窟たる階下の室に連れて行こうとすると、幕が下りる。
又見物の席が明るくなる。ざわざわと、風が林をゆするように、人の話声が聞えて来る。純一は又奥さんの目が自分の方に向いたのを知覚した。
「これからどうなりますの」
「こん度は又二階の下です。もうこん度で、あらかた解決が附いてしまいます」
奥さんに詞を掛けられてから後は、純一は左手の令嬢二人に、鋭い観察の対象にせられたように感ずる。令嬢が自分の視野に映じている間は、その令嬢は余所を見ているが、正面を向くか、又は少しでも右の方へ向くと、令嬢の視線が矢のように飛んで来て、自分の項に中るのを感ずる。見ていない所の見える、不愉快な感じである。Y県にいた時の、中学の理学の教師に、山村というお爺いさんがいて、それが Spiritisme に関する、妙な迷信を持っていた。その教師が云うには、人は誰でも体の周囲に特殊な雰囲気を有している。