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たかしまいし

高島異誌

国枝 史郎

「講談雑誌」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,007 字 · 26 页

青空文庫

妖僧の一泊

妖僧の一泊

「……ええと、然らば、匁という字じゃ、この文字の意義ご存知かな?」

本条純八はやや得意気に、旧い朋友の筒井松太郎へ、斯う改めて訊いて見た。二人は無聊のつれづれから、薄縁を敷いた縁側へ、お互にゴロリと転りながら、先刻から文字の穿鑿に興じ合っているのであった。

「匁という文字の意義でござるか? いやいや拙者不案内でござるよ」

松太郎は指で額を叩き、苦笑しながら左様云った。

「然らばご教授申そうかの――匁と申す此文字はな、何文の目という意義でござるよ。つまり文〆と書くべきを略して此様に書き申す」

「ははあ、文〆の略字かの。如何様、是は尤じゃ」

「何んと古義通ではござらぬかな」

「天晴古義通、古義通じゃ」

仲の宜い二人は笑い合い、何んの邪気も無く褒め合った。

先刻から門前に佇んで、鈴を鳴らしていた托鉢僧――頭髪白く銀のように輝き、皮膚の色も白く鞣革のように光った、老いた威厳のある托鉢僧は、其時何んと思ったか、つかつかと門の内へ這入って来たが、

「失礼ながら匁の穿鑿、ちと曖昧でござり申すよ」

斯う云うと縁側へ腰をかけた。

「これはこれは旅の僧、匁の字に異議ござるとの?」