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たかしまいし
高島異誌
国枝 史郎
「講談雑誌」1924(大正13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,007 字 · 26 页
仲秋三五の月
「いやいや人間であろうとも乃至は鬼畜であろうとも相手としては、同じ事じゃ! 不可抗力などとは卑怯な云い分……」
「黙れ!」
と、突然喝破して、ムックリ純八は立ち上がり、刀の束へ手を掛けた。
仲秋三五の月
「おお、果たし合いか! 心得たり!」
時の逸みで松太郎も、刀を執らざるを得なかった。
「卑怯な云い分とは無礼至極! いざ庭へ出よ、討ち果して呉れよう!」
「そう云う頬げた、いで此方こそ!」
二人はあわや一足飛びに座敷から庭へ飛び下りようとした。
「ま、ま、暫く、お待ちなされい!」
驚いたのは千斎で、しっかと二人の裾を握りいかな放そうとしなかった。
「驚き果てた振舞いな! 太刀持たれて何んとなされるぞ! 昨日今日の友垣では無し、幼馴染ではござらぬか! 卑怯と云われたとて恥しゅうも無いし討ち果たして呉れようと云われたとて、怒る可き筋がござろうか! まずまず笑って水に流されい! さあさあニッコリとお笑いなされい」
成程、このように云われて見れば、如何にもそれに相違無かったので、二人は無言で刀を置いた。そうして間も無く松太郎は辞し去り、事は穏便に治ったが、その時以来蟠が二人の間には出来たのであった。