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たかしまいし

高島異誌

国枝 史郎

「講談雑誌」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,007 字 · 26 页

青空文庫

蟇の池の怪

「偖こそ昨日の老僧は仏菩薩の化身であったよの! 我の貧困を憐み給い巨財をお授け下されたのであろうぞ! 南無阿弥陀仏」

と思わず知らず、純八は念仏を申したが、果して彼の思った通り、数えもされぬ程の其財宝は仏菩薩よりの贈物であったろうか?

「いや!」

と医師の千斎だけは、その好運を否定なかった。

「それこそ妖怪の誘惑でござるよ。すべて災難の参る時は、多くは最初には夫れと反対に、好運めいたものが参るものでござる。お気の毒な、純八殿じゃ。妖魔に魅入られて居られやす哩。が夫れにしても彼の老僧抑々何物の変化であろう」

蟇の池の怪

斯ういうことのあったのは、元禄十五年六月のことで、諏訪因幡守三万石の城下、高島に於ける出来事である。

偖、斯うして巨財を贈わった。本条純八は、是迄の貧しい生活を捨てて、栄誉栄華に日を送る事を、何より先に心掛けた。

この物語の原本たる「異譚深山桜」には、其時の事を次のように、美しい文章で書いてある。

「(前略)……彼の歓喜限り無く宛ら蚊竜時に会うて天に向かつて舞るが如く多年羨み望みたる所の家財調度を買求め、家の隣の空地を贖ひ、多くの工匠を召し集めて、数奇を凝らせる館を築けば、即ち屏障光を争ひ、奇樹怪石後園に類高く、好望佳類類うもの無し。