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たかしまいし

高島異誌

国枝 史郎

「講談雑誌」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,007 字 · 26 页

青空文庫

山なす財物

純八は老僕に手伝わせ、急いで褥を設けると、老僧を中へ舁き入れたが、是ぞ本条純八をして、数奇の運命へ陥らしむる、最初の恐ろしい緒なのであった。

山なす財物

純八は老僕の八蔵を、医師千斎の許へ走らせた。

間も無く遣って来た千斎は、静かに老僧の脈を数え、暫くじっと考えていたが、

「鳥渡お耳を」

と囁いて、隣室まで純八を誘った。

「何んと本条殿、あのご老僧は、貴殿のご縁辺ででもござるかな?」――声を窃めて先ず訊いた。

「いや縁者でも知己でもござらぬ。しかも今日邂逅ったばかりの、赤の他人でござりまするがな……」――純八は幽に眉をひそめ「何か老僧のご病気に就き不審の点でもござりまするかな?」

「左様、些不審ではござるが、夫れは又夫れとして何れ千斎、研究致す事として、兎に角至急あの御僧を門外へお移しなさりませ」

「それは又何故でござるかな?」

「いやいや何故も兎角も不用、一刻も早く追い出しめされ」

「それは不仁と申すもの、理由の説明無いからには、左様な不親切は出来ませぬ」

純八は首を振るのであった。すると千斎は気の毒そうに、

「御身の上に恐ろしい災難が振りかかっても宜しゅうござるか?」