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たかしまいし
高島異誌
国枝 史郎
「講談雑誌」1924(大正13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,007 字 · 26 页
奇怪の光景
それより何時迄も生き永らえて、立派な身分に成り上がり、継母殿の憎い鼻柱をヘシ折る思案をなさるがよい。……手頼るべき縁者ござらぬなら、兎に角拙宅へおいでなされい。どうじゃな。参る気はござらぬかな?」
「はい有難う存じます」――「それでは愈々参られるか?」――「はい、ご迷惑でございませぬなら……」――「他人の難儀を助けるが男子、何んの迷惑致しますものか。――では斯うおいでなさるがよい」
月の光から抜け出たような、美しい乙女をたずさえて、純八は何となく心嬉しく、林を抜けて家へ帰ったが、これぞ再び妖怪に憑かれて、身命を失う糸口であった。
奇怪の光景
若い男と若い女が、同じ家に起居し、同じ食物を食べ合っていては、その結果も大方は知れている。深山と名を呼ぶ其乙女と、本条純八とは一月経たぬ中に、切っても切れない由縁の糸を、結び合わした身の上となった。
で、純八は其時以来復も幸福の人間になり、生き甲斐ある身の上となったのであるが、今度も老医千斎ばかりは、彼の幸福を喜ばず、深山という女を怪んだ。そうして或時こんな事を云った。「人間は勿論総る生物には、その生物としての脈がござる。