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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

左右太の免役

――というのが、正直、かれら下役の、いい分らしいが、さりとて、泣き言をいうのは、中山出雲守の北組にたいし、なんとも、小癪だという意地もあって、忍んでいる顔つきだった。

「――山本はここに見えんか。山本左右太は」

そこへ、吟味役の市川義平太が、与力山本左右太をさがしに来た。

「左右太どのなら、いまし方、湯呑み所で、弁当をつこうておられましたが」

「いや、与力部屋も、湯呑み所も、のぞいて来たのだが」

「何か、急な御用ですか」

「お奉行が、呼んでいらっしゃるのだ」

「じゃあ、さがしましょう」

と、みな同心部屋を出払って、ひろい役宅、吟味所、各詰所、揚屋、仮牢、不浄門の裏の空地など、おもいおもいさがし廻った。

左右太の免役

奉行所の西門前に、俗に、石焼豆腐とよばれている「訴訟人休み茶屋」がある。

公事訴訟の手つづきやら、牢内の知人へ差入れ物をする身寄りの人々などが、ここで書類をかいてもらったり、時刻を待ったりしているので、いつも繁昌していた。

山本左右太は、与力のなかでの若手で、年はまだ三十がらみ、苦みばしった男前もわるくなく、石焼豆腐の評判娘といわれるお次と、とかくの噂があった。