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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

揉み消し上意

また、吉宗にしては、自分が、この改革期に、職を継いだというほかに、二重の責任感もあった。

揉み消し上意

伊勢山田の一地方吏から、中央の江戸南町奉行という重要な職に、越前守忠相を抜擢した者は、たれでもない、彼自身なのである。

この破格な、思いきった人材登用は、吉宗の前例無視や、弊政一掃の画期的な断行ぶりと共に、当時、一般を驚かせたものだった。

その奉行越前守――吉宗の眼識で、吉宗が、使命目的のために、据えたといってよい者が、いまや、まだ前途に多くの抱負をのこして、事績、いくばくも挙げないうちに、この失脚の危機に瀕したのだ。吉宗として、捨ておけないことには相違ない。

しかも、その忠相は、吉宗のかくばかりな蔭の庇護と、心配とを知ってか知らずにか、いかに彼の不利を、闇につつみ、窮地に助け舟を向けてやっても、渡りに舟とは乗って来ない。むしろいよいよ自らを、自身で追いつめ追い陥して、ついに問題を、龍ノ口評定所にまで提出し、あくまで天下白日の下に、事件をというよりは、自身の裁かれんことを求めているふうなのだ。

(困ったやつ。……おそろしいやつ)

という呟きは、吉宗がいつか、藪八を前においてもらした腹の底からの嘆息だったが、突として、昨日は、その越前守からも、もう一度、吹上において、御拝顔を得たいと、願い出て来た。