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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

盲目一路

――理由は、不意に、物蔭を離れた荒編笠の人影が、横から彼にぶつかッて行き、どんと、兇器か拳で、突き仆すと、そのまま風のように――賊の影とは反対な方へ――走り去っていたのだった。

盲目一路

雪もよいの夕だった。川千禽が何ときょうは多いことか。

約束の、師走の十三日。

市十郎は、いつも着通しの袷に、古編笠、窶れ刀の寒々とした姿を、お厩河岸の茶めし屋の前に見せ、よし簀をのぞいて、

「来ているかしら?」

と、この前、ここで別れた阿能十蔵の姿を、奥の床几にさがしていた。

「於市。やって来たな」

背を叩かれて、ふり向くと、その阿能十が、この前と同じ荒編笠を眉深に、この男の癖として、意味なくニタニタ笑っていた。

「あ。もうお先に来ておられたので」

「なあに、今さ。ちょうどよかった。まア、一杯やって、暖まろう」と、中へ入って、型のごとき煮込や熱燗をとって、ほどよく酒も腸にまわってきた頃――阿能はさっそく口をきり出した。

「ときに、どうしたい、約束の物は」

「持って参りました」

「なに、持って来た。そいつあ豪儀だ。どれ、見せてくれ」

「……が、ここでは、人目もありますから」

「なんの、おめえ、傍の者にゃあ、何を見ているか、分る気づかいはねえ」