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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

山田の案山子

呉服問屋の山善は、間口十八間、雇人も何十人といる大店だが、賊は、堀留川の裏河岸から、石垣づたいに住居へ押し入り、主の善兵衛や妻に重傷を負わせ、召使の幾人かは、無残に殺害されたとある。

ちょうど晦日なので、店の帳方から、一ヵ月の仕切帳と四百両余りの現金が、宵には、奥へ届けられていた。それも手文庫ぐるみ、また、用箪笥その他の有金など、あわせて七百何十両が盗まれていた。

金以外、品物は何一つ持ち去られていない。襲うことも疾風なら、去ることも疾風だった。家人を縄目や猿ぐつわにかけたりするような、手間どることもせず、目的を迅速に達するためには、無用な兇刃を用うることも、意としなかった手口がわかる。

で――証跡らしいものは何一つとどめていない。ただ、生き残った召使のことばでは、五人組の五人がすべて一様の黒衣を着こみ、もちろん覆面もし、刀の目貫を見覚えられないためか、大小の柄まで黒布で巻いていたという。

「なあ、由。いったい、どういうもんだろう?」

庄七と由。二人の番太郎は、木戸に立ちながら、それッきり往来もない深夜の無聊に、どっちからともなく話しかけていた。

「――将軍様もお代がわりになり、十何年も続いた“生類おん愍れみ”なんていう御政令も解かれて、どうやら人間も、犬以下でなくなったと思うと、この頃はまた、いやに血なまぐさい