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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

誠意の虚構

楽翁自身、すぐ出て来て、奥の客間。――用談は、多言を要さない。

「あ。……印籠のことで、お奉行のおさしずをうけて来られたか。それは恐縮」

と、楽翁は、あっさり、こういった。

「――その印籠は、昨夜、駕籠で急いで帰る途中、どこかへ、取り落してござる。いや、しもうたと、気がついたが、夜道の暗さ、駕籠の早さ。どこへ落したことやら……いやはや、何とも」

二人は、茫然と、二の句がつげない。

ここに臨むからにはと、死の座につくような気持でやって来たのである。そういわれても、にわかに二人の硬直は解れもしない。

「よろしい」

小林勘蔵は、きっぱりいって、膝を、つめよせた。

「しからば、ムリに印籠をとは申すまい。その代りに」

みなまでいわせず、楽翁の方から、覚悟のていで、先にいった。

「お連れください。――ありがたくお縄をいただいて、御一しょに参る」

「いや、老台を連れてゆくまえに、隣家の空家に匿うてある女賊に縄を打ちますが、お覚悟でござろうな」

「女賊とは」

「五人組のひとり、お燕という女」

「知らん……。そんな者」

「知らぬとはいわさぬ。証人がある」

「どこに、そのような証人が」