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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

「各にも、日頃、お世話になったが、山本左右太は、きょう限り、お奉行からおいとまを申し渡された。……どうも、名残りおしいが、ぜひもない」

「えっ。免役になったのか」

「うム。当分、ぶらついているつもりだ」

「どうしたのだ、いったい。――何か、お奉行のお気もちによほど逆らいでもしたのか」

「逆らわずにおられんからな」

「……どうして」

「貴公たちは、南の不評を、世間で耳にしないか。――いやもう、いうのはよそう。さんざん越前守様へ、面を冒していったことだ。善言耳に痛しの喩えで、容れられなければ、身を退くのが、古今の通例。……各も、せいぜい、善言は慎み給え。じゃあ、またいつかお目にかかろう」

左右太は、同僚に鬱憤まじりの別辞をのべて、やがてひとり通用門から立ち去った。

「あの足で、またすぐ石焼豆腐へ寄るんじゃないか」

同心のひとりがいうと、たれもが、そう思ったことらしく、みな笑った。

目安方の小林勘蔵を通じて、越前守から、山本左右太の解役が、各役部屋へ公表された。

行状、粗暴放埒ニ依リ――という理由だった。

たれも、ちか頃のかれを見ては、不当なる免職とおもえなかった。