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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

就縛

するとその時、外の明るい星明りに、誰か、二本の足だけの影が見えた。

はッと、身を返したその肩が、ひとつの土台柱へぶつかると、自分でも、驚くような音がした。

「しまったっ」と、辰三はとたんに、頭上の光へさけんでしまった。ふいに、畳一枚分の床板が、上から取り除かれたのである。

阿能十、三平、大亀と、三つの顔が、一しょに覗いた。

「野郎っ」

なぐり落しに、三本の刀が、四角な闇の穴を、乱打した。――が、左右太も辰も、白い切ッ先の雨を、からくも避けて、咄嗟の進退を、考えた。

二人にとっての、この瞬間は、まさに絶体絶命に思われた。なぜならば、さきに見た外の脚だけの人影は、いつか五人となり十人となり、さらに数を増して、この床下へ、包囲形に、這いすすんで来たのであった。

――だが、辰三は、それらの黒い影が、這いつつ来る各の手に、白い短い光り物を携えているのを知って、

「おお、半次か」

と、ひとりへ呼んだ。

答えはないが、彼の声を知ると、無数の影は、一せいにそこの桝土台を破って、光の下に集まり、猛然と、御用御用の声を、叫びかけた。

室内では、それにも勝る物音が起きた。