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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

「おおいつでも。……なお御不審があれば、楽翁に縄打って、いかにお白洲で糺問あるとも、また、拷問もいとい申さぬと、……お伝え下されい」

長くもいたたまれない気もちで、二人は、庭の木戸から往来へ飛び出した。そして、おもわず、顔を見合せて、

「義平太。よかったなあ」

「よかった……。ほんとに、よかった」

「だが、貴様には、気のどくだな。楽翁どのの申し立てを、そのまま左様かと受けて、御自分の窮地をのがれるようなお奉行ではないからの」

「父は、すべてを背負って、死ぬつもりかもしれぬ。どうも、今朝の様子は、余りにも洒々落々、物事を、ちっとも苦にしていない」

「あっ……。おいっ、義平太。あれを見ろ」

「えっ、な、なんだ?」

急に、勘蔵にそういわれて、勘蔵の見ている方を、何気なく、振り仰ぐと、いま出て来た楽翁の隣の二階に、頬づえついて、窓から往来を見ている男がある。

「わからんか、あの男……」

「ううむ、ゆうべの、藪八といった武家」

「そうだ。その藪八だぞ」

「はてな。どうして、この家に……?」

余り、見ているので、気がついたか、彼方の藪八も、ぴたと、そこの窓障子を閉めて、首をひっこめた。