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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁
――ただ、その方の父母の素姓や、きょうまでの径路について、ざっと聞きおかねばならぬ。……まず訊くが、そちの両親は?」
「…………」
「調書に依れば、そちの両親は、小石川水道端の秋田淡路守どののお長屋に住み、徒士を勤め、禄五十石。――父の今村要人と母みつとの仲に、ふたりの子があり、要人夫婦が死亡のとき、姉のしまは九歳、妹の袖と申す者……すなわちその方は五ツの年であったというが……その通りか、覚えておるか」
「…………」
お袖の姿は、石ではなくなった。あきらかに感情のうごきを見せ、ぽろりと、涙をこぼしたようだった。それは、父母の名が出たときであり、それから、ほんの一瞬だったが、急に顔を上げて、また俯向いてしまった。――おしまという姉があったと、聞かされた刹那であった。
「妹の袖は、五ツの年、大病に罹り、その病には、燕の黒焼がよいと人から教えられ、父の要人が、吹矢で燕を射たことが発覚して、当時、五代将軍家のお布令による厳しい“畜類おん憐れみ”の禁令にふれ、夫婦ともに、断罪に処せられた。一家は離散、縁者どももみな追放となり……袖は、後、水茶屋奉公に。姉のしまは、日本ばし裏新道の豆腐屋伝兵衛に貰われたが、年頃となって家出したまま、その後の消息は絶えておる。