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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

良人の頼春を、どこかへお隠しなされたでございましょうが」

こんどは俊基の方で、からからと笑った。そして「この女、すこし気が変なのではないか」と疑った。

が、躍起となって、波路は、また少し、つめ寄って来た。

「たしかに、いつぞやの兵火の晩、あの騒動の直ぐ前に、良人の頼春は、あなた方一味の隠れ家か、御所の内へでも、走り込んだにちがいありませぬ」

「裏切り者の頼春が、どうして、われらの前に姿を見せよう。そちは何かに、憑かれてでもいるとみえる」

「いいえ。まだ魔の夢に憑かれているのは良人てす。――六波羅の討手が、各所へ押し襲せたと知れたあの暁のこと。良人は、わらわを罵りちらして、夫婦の縁もこれきりじゃ。……一味への申しわけには、六波羅相手に、斬り死にするが本意なれど、いま一度、俊基朝臣にお目にかかり、身の潔白を申しあげてお詫びせねば、死ぬにも死ねぬなどと、狂気のように喚いて、いずこへともなく走り出たまま、今日まで行方も知れないのです」

「そうか。……それでは、そちは、去られた妻か」

「なんで、去られたままでいましょうぞ。良人のことばは、一時の逆上にすぎませぬ。飽きも飽かれもせぬ仲を、こんなにしたのも、みな、あなた方のせいというもの。