輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
――すでに、西の書院の内が、中ノ坪の高欄ごしに覗かれ、端然とひとり坐っている水干姿の女使者の白い横顔も見えていたのである。
そして、そこの半蔀の蔭まで来て、覗くともなく、内を窺い、
「オオ……」
思わずぎくと立ちすくんだ時、微かだったが、女の声が、内からも洩れて、その感情を、じっと抑えるかのように、白い顔が振り向いた。
「藤夜叉だな」
ツツツと、高氏は足つき荒く内へ入った。そして、彼女の前に、いや、わざと遠くに、どかと坐った。
この所作はもう、感情もむき出しな彼だった。
使者に名を藉り、藤夜叉がこれへ来たのも、ゆるされぬし、もしまた、これが道誉の悪質な悪戯なら、なおさらなことと、腹が煮える。
「…………」
が、藤夜叉は、すぐ手を下につかえてしまったきりだった。しばらくは、面も上げず物もいわない。ただ、ポトリと涙の音がその辺でする。
高氏は自己の煩悩と当惑を、意識なく、男の憤怒にスリ換えていた。愛情などは、みじん感じさせぬ声音で叱ッた。
「なにしにまいッた。藤夜叉」
「…………」
「この折と、高氏を困らせにでもまいったのか」
「……ま。なんで」
心外な、と彼女は濡れたままの顔を上げた。