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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「われらは、昨日、七大寺詣でに出た京家の青侍どもだが、道に迷うて夜すがら難渋のあげく、おあるじには御腹痛を起され、ぜひなく、しばし社前を拝借しておる。――物代は何なりと与えるが、従者どもに朝糧を。また、おあるじには、白粥なとさし上げて給わるまいか」

と、頼み入れた。

四林は、鳥の音ばかりだが、供奉の面々は袖垣をつらねて、おん輿を囲繞し、天皇は輿を出で給うことなく、内でそのまま、一碗の白粥を、朝餉として召しあがった。――随身たちも、腹をみたした。――皇居を脱け出られた第一夜はこうして明け、さて、こよいは何処に寝ることか。

この間に。

中務ノ宮は、奈良街道をふたたび馬にムチ打って、南都東南院の法務聖尋の許へ、夜来のてんまつ、並びに、勅のお旨をつたえに馳せた。

報をうけた聖尋が、いかに驚いたかはいうまでもない。

「えっ、勅使ですと。しかも木幡の路傍から?」

と、仰天した。

路傍からの勅旨などとは、そもそも、前例もない奇怪事である。だが、天皇はすでに、ついそこの奈良街道の途中まで来て、迎えを、お待ちうけであるという。

「すぐ罷りまする」

何はともかく、御使いに答えておき、彼はさっそく薬師院の寛宝、正法院の実佑のふたりへ計って、寺内の僧兵二百ほどを引きつれ、お迎えに駈け向った。