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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

小宰相と権大納言ノ局も交じっているらしかった。そして、

「ともあれ、佐々木を呼べ」

「いや、もう見える頃」

などと忠顕や行房なども騒めいていた。

人々が寄って、いぶかり合っていたわけは、中坪の地上に、一箇の竹ノ子笠が捨ててあったことからだった。

「どうして、このような下郎笠が、お座所近くに捨ててあるのであろ?」

と、最初に騒ぎ出したのは小宰相ノ局で、

「もしや、宮方の者か」

と、彼女が問題にし出したため、捨ておけずとなって、すぐ侍者たちから、道誉を呼びにやったものらしかった。

しかし、やがてその道誉が姿を見せると、彼は事もなげに、中坪に立って笑った。

「……や、ここへも紛れ入りましたか。昨夜、小盗人が二、三下屋の献物を狙いに這い込みましたゆえ、これは、そやつの物でございましょう。ご安心ください。ほかに別条はございませぬ」

すぐ、部下のひとりを振り向いて、道誉は顎でいいつけた。

「これ。……その穢い下郎笠を、どこへな取り捨てろ」

事はかんたんに片づいた形である。それから、侍者や妃へ、こう告げた。

「今日はこの辺の地頭や里人どもが、帝のお慰みにと、さまざまな催しを設けて、お待ちしておりますれば、どうぞ御遊のお身支度を」