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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

木霊

河原には、ほかの子らも騒いでいる。たった今、加茂の早瀬へかけて、女の姿が、浮きつ沈みつ流されて行ったと言い騒ぎ、

「こっちだ、こっちだ。こっちに見えたよっ」

少し下流の方では、べつな童が、どなっていた。

木霊

京の吉田山には、命松丸ひとりを留守において、兼好が、伊賀を歩いていたのは四月半ば頃で、その間に彼は、

「ちょっと、お門を通りましたから」

と、名張街道に沿う小馬田の服部家の門に姿を見せている。

だが、うさんな旅法師とでも見られたのであろう。門の小者は、奥へ取次いでもくれなかったし、それに不平顔もせぬ兼好もまた、

「いや、べつだんな用事でもござりませぬ。お夫婦とも、ご息災とさえ伺えば、それで祝着。ただよろしくおつたえを」

とのみ、飄として、すぐ立ち去ってしまったという。

それと、あとで聞いて、

「なぜ、ひと言、わらわにまで取次いではくれなかったのですか」

と、卯木が、家来どもの疎漏を悔やむと、良人の服部治郎左衛門元成も、

「それは、惜しかったの」

と共に喞ッて、なろうものなら呼び返したくも思ったが、すでにその人は、西か東か行く先も知れないというし、かつは邸内にも、ほかに容易ならぬ“滞在客”を抱えていたので、