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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

村へ帰って、一座みな田楽に励んでおれ。そのうちにまた、伊吹ノ城へ呼んでやる」

道誉は彼をおき捨てて、すぐ街道の表に立ち、馬をよび、また一同へ出立を命じていた。

具行の輿や道誉の人数が、摺針峠へかかったのは、次の日だった。

「朝のま、涼しいうちに」

と、早めに出たが、鳥居本では、はや汗まみれな、喘ぎ喘ぎの人馬であった。

きのうからの降り足らぬ雨雲が、なお醒ヶ井や伊吹の山地を閉じていて、むしむしする。かと思えば、六月半ばの陽がカンとつんぼになりそうなほど照りつけて、馬さえうごきたがらない。

それもやっと、番場の立場へ近づいたころだ。峠の上から、

「殿っ」

と、馬をとび降りて駈けよって来たふたりがある。道誉の留守城、伊吹の家臣らであった。

二人はすぐ、道誉の馬前に、ひざまずいて告げていた。

「火急のことゆえ、お途中と存じましたが、これまで、駈けまいってござりまする」

「何事がおこったのか」

「昨夕、鎌倉どのの御上使が、お着きでした」

「なに、執権殿のお使いとな」

「さればで」

「いかなる御用で?」

「さ……。その儀はまだ何も」

「いや、道誉にも会わぬうち、公命の内容を、そちたちへ語るわけもなかった」