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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「否とか」

「非力不才の者が、御陣の扶翼に参じなどしては、かえって乱を大きくし、宮方の禍いを深うするのみでございますれば」

「はて、遁辞ばかりいわるるの。謙虚はお辺の隠れ蓑か」

「いや、真っ向、腹を申しおりまする」

「なんの、さような辞をたずさえて、むなしゅう笠置へ帰れようか。花や歌の御使ではなし」

「背命の罪は、万死に値いたしましょうが、幾重にも、こう、ひれ伏しまする」

「ば、ばかな」

こうなってはもう個人藤房の語気である。激舌がついいわせてしまった。

「勅、さわやかにお受けとのみ思いのほか、こうなっては、藤房もはや、死を覚悟のほかはない。主上へおわびのため、自刃つかまつる」

「こは、迷惑な」

「ご存知ないか。われら君側は、ただに主上を至尊と仰ぎ奉るだけでなく、天地の神祇にかけて、一死の契りは常にこうなのだ。さもなくて、何でかほどな大事を挙げえようぞ。……が、聞かれよ正成。死すまえに藤房が、もう一言、申し聞かすことがある」

藤房は自然ふるえをおびてきた。この場のはずみでは、自刃もぜひない羽目になるかもしれない。――その必死が、眼の中をたぎらせ、また、満身を賭けての説得にもさせていた。