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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
は田無方面へと、三分裂の潰走を止めどなくして、かず知れぬ捕虜や死傷者を途中に捨てた。
もちろん、踏みとどまって、新田勢をなやました敵もまた少しではない。それらは、ひろい武蔵野の雑木林や丘や部落などの遮蔽物をめぐって、終日、頑強な抵抗をくり返した。しかしもう主力を迷ぐれた孤軍である。ついには随所で殲滅され、やがて夜の曠野には、その雄たけびもなくなっていた。そしてただ、しいんと血ぐさい風がこの世の草木を吹きなでており、遠くの赤い火だけが勝者のどよめきを次の朝までほこっていた。
こうして、きのう今日の戦場になった所は、すべて鎌倉街道の“古道”であった。――で、その宿々にあたる入間川、所沢(古くは野老沢とも書く)、恋ヶ窪などには、例外なく、遊女のねぐらもあったし、また立川には、当時、おそろしい勢いでまんえんの兆しをみせ出していた性慾往生を教義とする新興宗教の立川流とよぶ、真言秘密道場なども流行っていた。
おそらく、義貞の姿は。
そんな庶民の目からは、こつねんと、世に現われた将軍のように見えたであろう。坊主、遊女、土地の名代などが、さっそくその陣営には、うるさいほど、献上物をたずさえて、媚びを呈しに寄ってきた。