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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

義貞もそれには、共に眉を悼んでみせた。

しかし、和氏の狙いは違う。

さきに義貞が、鎌倉攻略の功を「義貞が一手にて」と、ふと誇ったことばにたいし、思慮ふかい彼は、そのときは「いや」とも逆らわず、ただここで、足利家もまた大きな犠牲をこの戦いに払っていることを、やんわり、言外にほのめかしていたものだった。

戦いは戦いだけで終らない。

敵を消し去ると、すぐまた、味方同士、味方内の仮想敵を見つけ出す。それは政略という互いの腹の中で始まる。

千寿王を前において。

足利――新田

と合併してなされる諸般の打合せが、義貞と和氏とのあいだで、酒間、仲よくいろいろと語られていた。が、そのうちに。

「はははは」と、義貞は笑いくだけて。「……このような小むずかしい談合、若御料(千寿王)にはご退屈らしいの。細川どの。あとは後日としよう」

「これはしたり! 小さい欠伸をしておいでられる。なにぶんにも、おいとけなき君、おゆるしを」

「なんの、なんの。むりはない」

「やがて朝廷のおさしずも待たねばならず、都との時務の往来にも、一致を欠いてはなりませぬ。この後は、和氏もしばしばここへ伺候いたしますれば」