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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

まして、今日はだ。

つい一年前には、囚人輿で隠岐ノ島へ送られた道を、この還幸となったこと。――この日、六月二日には、赤松円心の五百騎もお供に加わったから、その行列は、福厳寺の門を出るまでもずいぶん時間を要したであろう。大納言ノ局、三位ノ局廉子など、隠岐このかたの、妃たちもお連れなのである。

廉子は、昨夜らい、

「こういう時にこそ、かえって一時のお疲れが、どっと出ぬでもありませぬ。なるべく朝は朝涼のまに、お道をすすめ、京もはやとて、おいそぎなく」

と、それのみでなく、こまかいご注意をすすめていた。そのいそいそしさ、良人の晴れの日を見た糟糠の妻の風がある。

中一日の御逗留のまに、

「御衣もこれでは。……お帝冠も、ま新しいのに」

と、お身まわりから、乗車のさしずまで、行房をつうじて、一切のきりもりしていた彼女は、当然、自身の后車やら身粧いにも、細心な装いを忘れなかった。それだけを見れば、あたかも、彼女自身の凱旋を、彼女がときめいているようだった。あるいは、こういう日の誇らしさに酔うことは、女人のほうが数倍かもしれなかった。なにせい、今朝の阿野廉子が、軍兵環視の中を、車御簾のうちにかくれた姿には、もう島窶れの翳もなかった。