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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「でも、窓は小さいが」
「だいじょうぶ。おらの体はもっと小さいぜ」
「外は、たしか紙屋川だし」
「だからなおいいよ。みんなの帯をつないでおらに持たしてさえくれれば」
日頃の大人たちも、今はみな、一少年の素朴な機智に全生涯をあずけて悔いない顔つきになっていた。それに命松丸も、世間の大人たちから、かつてこんな信頼感をもって身をくるまれたことはない。師の兼好と友の雀のほかは、みな自分を“寝小便小僧”と嫌ったり冷たい目で刺すばかりで、およそこうまで大人が自分をみとめてくれた覚えはなかった。それが彼を無性にその行動へ弾ませてもいたらしい。
やがて。その夜のうちのこと。
「……放すよ」
彼は首尾よく牢をぬけ出して、その体を、紙屋川の水の中へ、肩の辺まで浸けていた。そして後ろの高い土壁の切窓を振り仰いでいた。
すぐ、スルスルと長くつないだ帯の影が牢の中へ手繰りもどされて、その端も見えなくなった。だがまだ彼は仰向いたままでいた。――するうちに、ピラと彼の待つものが切窓から降りて来て、彼の肩にとまった。まもなく、ジャボ、ジャボと水音を忍ばせて、紙屋川の向うへ彼は消えて行った。