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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

男山

朝臣の一人として王政へのご勤仕もなり難いこと――」と、暇を請うたものだという。

それはこまる。

と、後醍醐はことばをつくして、彼を恐れなだめられたとも伝えられた。それかあらぬか、いちばい尊氏に優遇の実をしめされ、まもなく彼を参議に昇げられた。そして季節は中秋九月に入っていた。

男山

秋には、行幸が多かった。

加茂へも、東寺へも、それはあったが、しげしげのお出ましは、おおむね二条高倉の新地で、古典には、こうみえる。

鳳闕の西、二条高倉に

馬場殿とて

俄に離宮をたてられたり

天子、常に行幸あつて

歌舞、蹴鞠のひまには

競馬を番はせ

笠懸を射させ

御遊の興をぞ添へられける

秋も、つい二年前の秋は、どうだったろう。

天皇は隠岐の島にあり、皇子らも遠い配所の月だった。大塔ノ宮は吉野の孤塁に、千早は敵の重囲のなかで、明日の望みはおろか、一命すらも、いつ北条の寝刃に会うやらと、日々が露の身のおここちだった。

それが。今はわが世だ、都の秋だ、愉しまずして何の人生、とは衆生の願いだが、天皇とて、それにもれるものではなかろう。わけて後醍醐はまだまだ壮者だ。後宮もかずあるうえになお、二条家の美姫栄子を女御に入れたのもごく近ごろのことである。