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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「ほ」

「その折は、琵琶も聞かずにお帰りでしたが、あとで、東宮ノ大夫やら小女房までが、覚一法師というのは、近ごろ蝉丸の再生とみんなが評判している琵琶の上手、みすみす惜しいことを遊ばしたと、皆していうものですから、……もの珍らな東宮のご童心が、俄に、覚一を召せ、覚一を呼んで……と、おせがみなのでございまする」

「盲か」

「かいもく無明らしく、斎宮でも、母の草心尼とやらが、つき添うておりました。……いえこんなことは、みかども夙に御存知と思うておりましたが」

「いや知らぬ」

「でも、東宮ノ大夫に調べさせてみましたら、それは参議尊氏の身よりだそうでございますよ」

「足利の」

「いとことやら、叔母とやら」

「はての。近習もそのような世事話はしたことがない。では六波羅の内におるのか」

「いいえ、近ごろ小松谷のほとりに、一庵を作ってもらい、そこにいて専念、琵琶の工夫をしているのだとか聞きまする」

「……。ふうむ」

「二十日といえば、月の見頃はすこし過ぎますが、せっかく、東宮もその覚一を御所へ呼んで、お愉しみにしておられますこと。そのうえもし、お父のみかどにもお渡りくださると聞けば、どんなにおよろこびかとぞんじますが」