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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「よし、いわんな」
尊氏はしばらく彼と根くらべのように黙りあった。
そして、こんどはずばと言った。
「河内殿(楠木)の内に、龍泉殿とか呼ばれているご舎弟があったな。そうだたしか正季殿という。――そちはその正季の家臣であろうが」
「…………」
「顔にも出たぞ、口をとじている意味はあるまい。つまらん痩せ意地はよせ」
「どうしてわかる」
「わからいでか。そのわけは、あとでそちが以前親しくしていた具足師の柳斎から聞け」
「柳斎?」
「お。……はや今朝はみかどの御下山。そろそろ、供奉のお勤めに罷らねばなるまい。あとは柳斎にあずけておく」
尊氏は、縁を立ち、そしてつきあたりの杉戸へむかって、
「右馬介、右馬介」
と、よんでいた。そして一色右馬介の姿を前にみると、こう言いのこして、彼は出仕の身支度にほかの部屋へ入ってしまった。
「そちはこの者を、いぜん河内の龍泉で見ているといったな。むかし馴じみだ。よく話しあってやるがいい。そしてすんなり白状したら、縄を解いて放してやれ。あずけたぞ、生かすとも殺すとも」
この朝ふたたび、石清水八幡の宝前に、天下泰平の祈願をこめ終った後醍醐は、やがて、天楽喨々のうちに、男山のながい石段を、彩雲のように供奉全員とともに下山された。