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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

こばんだのは、畠山五郎、仁木於義丸たち。また一色右馬介も、

「つい昨夜のこともあり、またぞろ、どんな御危難が待たぬともかぎりません。いかに都の辻とても」

と、みな不安顔してきかないのだった。その気もちを、ありがたいとでもいうことか。尊氏はかえっていやな顔をした。

この仰々しさが彼には困惑なのである。男山の奇禍はかたく口止めしておいたのに、もうすべてに洩れているらしい。おおいがたい激昂が彼らにみえる。それが尊氏には心にそむくものらしい。

「わからぬやつらよ」

と、ついに叱って。

「先へ帰れと申すに!」

「はっ」

「右馬介にも申しておくが」

「は」

「かまえて、夜前の刺客のことは、これ以上は他言をするな。してくれるな。もし、世上の口端にまでのぼるようになったら、それはかえって尊氏を危ううし、暗やみの兇刃以上な難儀を呼ぼう。わかったか」

「はい」

「おとなしく引揚げて、どこまでおとなしくしているのだ。よろしいな。行け」

いい捨てると、尊氏はふたたび衛府の門内へもどって行った。そして、内裏の西北にある校書殿の廊ノ細殿の外にかかるや、ふと佇んで、

楠木は?

と、約束の正成が、もう来ているか否かを、そっと体で聞きすました。