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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
しかし昨夜は恐ろしさに眠りもえず、思い切って、伺ったわけでございまする。これは千種殿のお考えに問う以外、思案もないと意を決しまして」
「よろしい。お辺はここを出てはならぬ。その代り、お辺は罪なき者として進ぜる」
忠顕は言って、そのまま公重の身は、自邸の内に監禁してしまった。そして彼自身はすぐ二条内裏の御門へ馬をとばして行った。
参内には、みゆるしを待たねばならぬ。牛車、束帯が慣わしでもある。だがいま、忠顕にはそんな顧慮のいとまもない。乗りすてた駒を衛府へ預け、中重ノ門を大股に殿上のほうへ通って行った。
「あれ? 千種どのが」
いぶかる中でもたれひとり、とどめる者はなかった。時めく頭ノ中将殿であるからだ。おそらくその唐突な出仕に殿上でもまた同じような怪しみと静かな驚きの渦紋がよび起されていたことであったろう。
まもなく。
主上をめぐって、俄な密議がおこなわれ出したふうだった。――いつか夜になっていて――深更もなお御簾越しに中殿の白い灯をよぎる衣冠の影が、そっと外へ立ったり席へもどってはまた議事に入るなど、ただならぬ気配であった。しかし、外部には一切何もなきかのようなひそまりが蔵人たちの端にも注意ぶかく守られていた。