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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

ここは時宗寺の蓮華寺の地域らしく、堂の廂には、

一向堂

の額がみえる。

たちまちここを中心にやや遠くまでの防衛線が仲時の指揮に布かれ、やがて峠の途中で切断された残余の兵も来て、まんまるな一陣となった。

いつか陽は高く、今日にかぎってまた、真夏のような照り方だった。――六波羅を落ちていらい、食も眠りも足りていない人々には、この日射に目がくらみそうだった。かぶとの鉢金に蒸された頭には、視野の物さえかすんで見え、死もさまでには恐くなく、生きんとすることさえ淡い妄念でしかなくなっていた。ただ入れ代り立ち代り襲ってくるものとの闘いに疲れていた。

賊徒の群は、刻々ふえて来るばかりであった。

古典には、この賊徒なるものをたんに「――近江、伊賀、鈴鹿、この界隈までの強盗山賊あぶれども」としかその質を言っていないが、はたしてそんな有象無象の手輩ばかりであったろうか。

疑わねばならぬと思う。

その解明はあとにするが、天皇、上皇、仲時らの四百余人を遠巻きにしつつだんだん迫ってきた賊の数も「いつか五、六千人にも余るほどなもの」が一向堂を包囲したとなっている。古典の誇張と割引きして、約半分とみても二、三千だ。