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やそうざっき・やちょうざっき
野草雑記・野鳥雑記
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《野草雑記・野鳥雑記(やそうざっき・やちょうざっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,016 字 · 284 頁
信ずる人がもう尠なくなって、聴衆を無智文盲の幼童に求めた以前、久しい間夜の鳥は成人にも怖れられた。鵺は単に未明の空を飛んで鳴くために、その声を聴いた者は呪言を唱え、鷺も梟も魔の鳥として、その異常な挙動を見た者は祭をした。前に掲げた時鳥のトトサヘカカサヘ(父へ母へ)も、聴く人はこれを孤児の死ぬ前兆と考えた。郭公を早来鳥と名づけて人が畏れたのも、ハヤコーをかの国への招きの如く感じたからである。あるいはハコ鳥とも称して魂は箱の中に、管理せられ得るものの如き信仰をさえ養っていた。
鳥が突如として天空の一角から、我々の眼の前に現れて啼くのを見て、神の使のように思うのは自然である。人の心がこの躯を見棄てて後まで、夢に現れまたしばしばまぼろしに姿を示すのを、魂が異形に宿を移してなお存在するためと推測したのがもし自然であるならば、それを野の鳥の声殊に清く、人の休息しまたは静かに物思う刻限を測って、訪れ来る者に求めようとしたのも、怪しむ余地は殆とないのである。ただ凡人は自ら公冶長を以て任ずることは出来ぬ。その語を通訳するにはおのずから術がなくてはならぬ。故に我々の祖先はその心情の最も小児に近かった時代に、特に謹んで野の鳥の昔話を聴いたのみならず、更に忠実にこれを記憶して、次に来る者に教えて置こうとしたのであった。